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森羅万象と夜のしじま

読書、散歩、音楽など。

作家志望の人

独白

大学時代の同期が作家を目指している。

秀麗な文体に見るべきところがあるが、唯我独尊、「俺様文学」の傾向があって、なかなか評価されない。

本人は古今東西の文学に関する学識があり、自分こそが文学の正統なる後継者と言ってはばからないから、世間の評価など意に介さず、創作に夢中になっている。

しかし文学は時代精神の反映あってこそ。古代の神話は民族の物語、詩は知識人たちの共通の美意識や思想を表す。国民国家の成立にあたっては、各国の言語による国民の物語が求められた。

これらの文脈のないところに、いくら過去の文学的遺産である修辞や形式を用いて小説を書いても、それは仏の入っていない仏壇に過ぎない、と私は思う。世間が、出版社が、評論家が相手にしない。見ていて、友人として痛ましい。

などと指摘すれば、たちまち友情にヒビが入ることは想像に難くない。「ならばお前も書いてみろ」と言われてお終いであろう。あるいは単なる愛書家の私には及びもつかない文学の境地があって、時代を超えた普遍性がそこにはあるのかも知れない。

いずれにせよ、人生は有限であり、結果が全てだ。黙って見守るのも友情のひとつの形、処世術のひとつ。彼の成功を祈ることにしよう。